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ドクターのアドバイス

札幌南一条病院工藤靖夫 医師

私が40年前に、医師になって初めて受け持った患者さんが、糖尿病性腎症の患者さんでした。糖尿病性網膜症で、目が幾分不自由で、腎機能も低下していました。当時、ちょうど必須アミノ酸製剤の臨床治験が始まったばかりの頃で、大阪大学の先生に手紙を書いて、製薬会社からその薬を取り寄せる事ができました。その効果が少しでもあれば良いと願いつつ、患者さんの腎機能の推移(クレアチニンの逆数)を図にプロットしたり、患者さんの尿の窒素分を測定して、窒素バランスを測ったことなども、思い出されます。この薬は、今ではアミノ酸製剤として、保険使用ができるようになりました。この頃から、タンパク質や食塩などの食事療法の重要性を学びました。
ただ、食事療法は、患者さんが理屈では分っていても、実践して継続することが、非常に難しい事も分りました。逆に、あまりに厳しく制限しすぎて、栄養状態が悪くなる患者さんも見受けられました。なんとか、食事療法を適切に継続できるようなよい方法はないかと模索しておりました。最近では、ITも発達して、40年前とは大きく状況が違います。料理動画を見て実際の自分の献立に役立てることも、格段に簡単になっています。これを使用しない手はありません。
今回、この考えに同調して頂いた、インスタグラマー・シェフ・管理栄養士さんの協力を得て、料理動画提供サイトを立ち上げることができました。少しでも使いやすくなるように、患者さんの要望に合わせて、内容も改善していこうと思います。また、基本的な腎臓病・糖尿病の医学的な知識や最新情報についても、医師の立場で発信していこうと思っています。この動画サイトが、多くの患者さんの役に立つことを、心から願っています。

【医師の記事】腎生検とは?

Q1 腎生検とは何ですか?

 

蛋白尿、血尿、腎機能低下のある患者さんにとって最も相応しい治療法を決定するために、

尿を作っている腎臓の一部の組織をとり、顕微鏡で評価することが必要になります。

「腎臓から組織をとる手技・操作」のことを「腎生検」と呼んでいます。

腎生検の目的は、3つあります。

  • ① 正確な組織診断を得ること
  • ② 病気の見通しを予測すること
  • ③ 適切な治療法を決定すること

 

 

Q2 どのようなときに腎生検が必要になるのですか?(腎生検の適応は?)

 

腎生検が必要になるのは主に次のような場合です。

  • ① 血尿が持続し、進行する慢性腎炎が疑われるとき
  • ② 1日3~0.5g以上の蛋白尿があるとき
  • ③ 大量の蛋白尿、浮腫がみられるとき(ネフローゼ症候群など)
  • ④ 急速進行性腎炎が疑われるとき

【急速進行性腎炎とは?】

血尿、蛋白尿が存在し、数週から数ヵ月で腎臓が働かなくなる腎炎ですが、

早期発見、早期治療で治る患者さんもいます。

⑤ 原因不明の腎不全で、まだ腎臓が普通の大きさの場合。

 

 

Q3 腎生検を行わない腎臓病はあるのですか?(腎生検の禁忌は?)

 

腎生検を行わない場合は次のような場合です。

・長時間にわたる腎機能の低下があり、すでに腎臓が縮小している場合

・多発性のう胞腎の場合

・コントロールできない出血傾向、高血圧、腎および腎周囲の感染があるとき

・腎生検中の指示や、腎生検後の安静が守れない可能性があるとき

・患者さんやご家族のご了承やご協力が得られないとき

 

 

Q4 腎生検はどのようにして行われるのですか?

 

【超音波ガイドでの針腎生検】
  • ① 患者さんはうつぶせになります。
  • ② 超音波をみながら腎臓の位置を決定します。
  • ③ 痛み止めの注射をした後に、背中から細い針を刺します。
  • ④ 針が腎臓の上に達したところで、息を止めていただきます。
  • ⑤ その瞬間に腎組織を採取し、針を抜きます。この操作を2~3回行います。

採取する腎組織は、太さは鉛筆の芯くらいで長さは1~2cmくらいです。

  • ⑥ 終了すると5~10分間圧迫して出血をとめます。
  • ⑦ 仰向けになり6~12時間のベッド上安静が必要となります。
  • ⑧ 3日間止血剤の点滴を行います。
  • ⑨ 入院期間は、3泊4日程度となります。

 

 

Q5 腎生検は難しい技術なのですか?合併症や危険性は何ですか?

 

超音波ガイドでの針腎生検は、訓練の必要な検査ですが、超音波で腎臓の位置を確認して行いますので昔のようにX線写真を元に盲目的に針を刺していた時代よりは、格段に安定した技術になっています。

日本腎臓学会の平成10~12年の集計によりますと、日本全国で1年間に約1万人の方が腎生検を受けています。軽い出血などの合併症が、100人あたり2人程度(1,000人あたり20人程度)で生じます。すなわち98名の方は特に問題なく終了しています。輸血や外科的処置を必要とする人は、1,000人あたり2人程度です。すなわち、998名の方では特に大きな処置は必要ありません。

通常の腎生検の手順で行えば、かなり安定した検査法であることがわかります。

 

 

 

Q6 腎生検の利点は何ですか?

 

次のような利点があります。

  • ・光学顕微鏡、蛍光抗体法検査、電子顕微鏡などにより詳しい組織診断の情報が得られ、腎疾患の診断ができるようになる。
  • ・腎臓病の治療法には、いろいろな副作用が起こることもありますが、正確な診断を行うことで、治療法による危険性を回避することができるようになる。
  • ・特殊な治療法により腎機能の回復が期待できることがある。
  • ・腎疾患の今後の見通しがつくことにより、出産や職業の選択など人生設計ができるようになる。

 

 

Q7 腎生検の結果、どのような疾患が診断されるのですか?

 

私どもの病院で行った100例の腎生検の結果からは、IgA腎症29例、微小変化群12例、巣状糸球体硬化症12例、膜性腎症8例、膜性増殖性腎症1例、その他38例となっています。

 

 

 

 

Q8 診断された疾患は将来どうなるのでしょう?

 

それぞれの病名により、その後の経過は違っています。ほとんど腎機能が変化しないものから20年後に半数以上が腎不全になるものまで混在しています。これらの病気はおのおの治療方針に違いがあります。正確な診断のためにも腎生検が必要とされる訳です。

 

 

 

Q9  IgA腎症と診断されましたが、将来どうなるのでしょう?

 

慢性糸球体腎炎の約半数を占めるIgA腎症は、予後良好の疾患と思われていましたが、蛋白尿が指摘されてから20年後にその約40%が腎不全になることが明らかになってきました。このIgA腎症も、その程度により4段階に分かれており、その後の経過が違い治療内容も変わってきます。腎生検に基づき、適切な治療を選択する必要があります。

 

 

 

Q10 糖尿病による蛋白尿と言われましたが、腎生検をしたほうがよいでしょうか?

 

糖尿病により腎臓の障害が起これば蛋白尿が見られるようになります。この時点での治療方法は、糖尿病学会などから薦められたものがあります。しかし、血糖のコントロールがよくても蛋白尿が続く場合などは、糖尿病に慢性腎炎などの他の病気が合併していることもありますので、腎生検を施行したほうがよい場合があります。